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菩薩

【他の分類へ】 如来明王その他

ルーツ

ここに登場する主な仏尊
観音菩薩
弥勒菩薩
勢至菩薩
地蔵菩薩
文殊菩薩
普賢菩薩
虚空蔵菩薩
日光菩薩・月光菩薩
薬王菩薩・薬上菩薩
金剛薩た菩薩
五大力菩薩
般若菩薩
大随求菩薩
二十五菩薩



■六波羅蜜
No. 修行 説明
布施
(ふせ)
施しを与える
持戒
(じかい)
戒律を守る
忍辱
(にんにく)
何事にも耐える
精進
(しょうじん)
努力する
禅定
(ぜんじょう)
真理を見極めるため智慧を磨く
智慧(ちえ)
または
般若波羅蜜
(はんにゃ
はらみつ)
物事の本質を見抜く

観音菩薩
観音菩薩
典型的な観音様です。何とも柔和な顔で、気持が落ち着きます
(山崎祥琳 作)
©山崎祥琳の部屋


■三十三観音
楊柳観音 ようりゅう 楊柳の枝を持つ。病苦から救う
龍頭観音 りゅうず 雲中の龍の背中に乗る
持経観音 じきょう 岩座に座り、手に経を持つ
円光観音 えんこう 岩座に座り合掌する
遊戯観音 ゆげ 雲上で左ひざを立てて座る
白衣観音 びゃくえ 白い布をまとう。息災、除病、安産、子育ての仏様として信仰された。大船や高崎の観音がこれ
蓮臥観音 れんが 蓮華に座り合掌する
滝見観音 たきみ 断崖に座って滝を見る
施薬観音 せやく 岩座に座り、右手を頬にあてる
魚籃観音 ぎょらん 手に魚籠を持つ、または大きな魚に乗る。除毒、魚供養
徳王観音 とくおう 岩座に座り杖を持つ
水月観音 すいげつ 蓮華の上に立ち月を見る
一葉観音 いちよう 水上の蓮華に左ひざを立てて座る
青頸観音 しょうきょう 岩座に座り右手をひざに立てる。あらゆる恐怖と災難から救われる
威徳観音 いとく 蓮華を持ち岩の上から水面を見る
延命観音 えんめい 岩にひざをつく
衆宝観音 しゅうほう 右手を地に付ける
岩戸観音 いわど 毒蛇の住む岩戸に座る
能静観音 のうじょう 海辺の岩に座り手を岩にあてる
阿耨観音 あのく 岩座に座り滝を見る
阿摩堤観音 あまだい 獅子に乗り、魚と果実を持つ
葉衣観音 ようえ 勇敢な姿をして岩座に座る
瑠璃観音 るり 香炉を持ち水上の水上の蓮華を持つ
多羅尊観音 たらそん 雲の上に立つ
蛤蜊観音 こうり はまぐりの前に座る
六時観音 ろくじ 経典(梵篋=ぼんきょう)を持つ
普悲観音 ふひ 両手を隠し山上に立つ
馬郎婦観音 めろうふ 婦女の姿で「法華経」と頭蓋骨を持つ
合掌観音 がっしょう 蓮華の上に立ち合掌する
一如観音 いちにょ 雷を征服するように雲に乗る
不二観音 ふに 水上の蓮華に立つ(執金剛神)
持蓮観音 じれん 蓮華の茎を持つ
灑水観音 しゃすい 杖、灑水器(浄水を盛ってある)を持つ
  • 大乗仏教の展開により多くの如来が考え出されるうち、それらの如来に従って 多くの菩薩が如来を目指
    して修行をしているという考え方が生まれ、様々な 菩薩が生まれました。

  • 菩薩の修行は「六波羅蜜」(右欄参照)と呼ばれています。

特徴

  • 出家する前の釈迦の姿をモデルにしていますので、上半身は裸で、左肩から右脇にかかけて条帛をかけ、
    天衣を肩や腕に絡ませています。下半身は裳(裙)をつけるのが一般的です。

  • 髷を結い、宝冠や頭飾をつけ、体には瓔珞(ようらく)、臂釧(ひせん)、腕釧(わんせん)などを身
    につけます。怒った顔の馬頭観音を除いて、他のほとんどは女性的な柔和な顔をしています。 優
    しい顔の女性を、「菩薩のような」と形容するゆえんです。

  • 多面多手像が多い。大勢の人々に対するには顔がたくさんあったほうがいいし、 救いのためにさしのべる手も数が多
    い方が便利だからです。

主な菩薩像

観音菩薩
(観世音菩薩)

サンスクリット語でアヴァローキテーシュヴァラといい、仏の慈悲の「悲」をもって、
現世の生活に悩む人の苦しみを救います。 阿弥陀如来の化身と考えられています。

「観世音」とは、世間の人々の救いを求める声(音)を観じると、直ちに救済の手を差
し伸べるという意味で、救いの要請があれば、千変万化の相を表して人々を導き、大きな慈
悲を行います。密教ではこうした観音菩薩の、場に応じた多彩な慈悲のはたらきを、多面多臂
(多くの顔と腕)という形で強調した変化観音として登場させました。

変化観音はすでに奈良時代に、千手観音・十一面観音などがつくられ、平安時代に体系的に
密教が導入されると、曼荼羅のなかに描かれるのをはじめ、種々の観音が加えられるように
なりました。変化観音に属さない2臂の観音は、観音の基本形ともいうべきもので、
聖(正)観音と呼ばれますが、飛鳥時代は法隆寺の百済観音や救世観音など、伝承にもとずく
名称を持つ観音像もあります。

聖観音
正観音

サンスクリット語でアヴァローキテーシュヴァラといい、すべての観音の基本となる菩薩です。単独で祀られるほか、勢至菩薩とともに阿弥陀如来像の脇侍となることもあります。

特徴

頭上に阿弥陀如来の化仏をつけ、蓮華のつぼみや水瓶を持っているのが一般的です。一面二臂像で、右手に蓮の花、左手に水瓶を持つ作例が多く見られます。ただし、持物については経典の記述も像例もまちまちで、一定していません。
化仏は観音菩薩のシンボルで、准提観音を除くすべての観音に付けられます。

十一面観音

サンスクリット語でエーカーダシャムカといい、人々のさまざまな苦難に対応するため、すべての方向に顔を向けた観音で、変化観音のうちもっとも早く考え出されました。頭部に十一の顔を表して、それぞれ人々の苦しみを救う力が秘められています。平安時代以来、民間信仰と結びついて観音信仰の主流を占め、「観音すなわち十一面観音」と考えられるほどに広まりました。

特徴

頭上の十一の各面には、阿弥陀仏の化仏を付けた宝冠を頂いています。左手に水瓶を持ち、右手は前に向けて開く施無畏印の2臂像が多いですが、密教の経典には四臂や八臂の像も説かれています。
十一面の特徴は下記の通り。

前3面 菩薩面 おだやかな顔。
慈悲を表わします
左3面 瞋怒面
(忿怒面)
悪人を戒めます
右3面 狗牙上出面 優しい顔で、人々を
励まします
後1面 大笑面 大笑いして、悪行を
笑い飛ばします
頂上 仏面 仏道に入った人に
教えを説きます
千手観音

サンスクリット語でサハラス・ブジャといい、「千の手を持つ者」の意です。正しくは千手千眼観自在(せんじゅせんげんかんじざい)菩薩といい、大悲観音ともいわれます。千の手にひとつひとつ眼があり、その眼で人々の苦悩を見て、すぐに救いの手を差しのべてくれます。
日本では平安時代に平清盛により京都蓮華王院(三十三間堂)が造営されたのをはじめとして、最もポピュラー的な存在となりました。後世には十一面観音とともに圧倒的な支持を得るようになり、全国に多数の作例が残されています。西国三十三番札所の本尊は、その多くが千手観音です。

特徴

本当に千本の手があるのは、唐招提寺金堂や大阪葛井寺のそれです。通常は合掌する二本の手と四十本の小さな手で構成されており、小さな一本の手で二十五の願いを聞き届けてくれるとされています(25×40=1000)。この四十本の手に、錫杖、宝珠など他の仏がそれぞれ持っている持物を一人で持っています。
頭は十一面で、全ての方向を注視し全ての人々を救う十一面観音の救済の意志に加え、千本の手で救済の具体的な手段を表現しています。ただし、本面の眉の間に縦に第三の眼があるのが十一面観音と異にするところです。

眷属

二十八部衆(→その他の部参照)、風神・雷神を従える例があります。

馬頭観音

サンスクリット語でハヤグリーヴァといい、平安時代ころから信仰が盛んになり、近世には民間信仰とも結びつき、馬を守る仏と考えられ、農耕をはじめ交通・運送用の馬の安全を願って、路傍の石仏として各地で盛んにつくられました。衆生の無知や苦悩を断じ、あわせて諸々の悪を破壊消滅させます。
忿怒の表情をしていることから、八大明王の中にも数えられ、馬頭明王、馬頭金剛明王などと呼ばれることもあります。手ごわい煩悩を駆逐するためには、優しい慈悲の表情では手に負えないと考えられるからです。

特徴

頭上に馬頭を頂き、胸の前で馬頭印とよばれる特殊な手の組み方をしています。色は赤が基本で、恐ろしい忿怒の表情をしています。
最も多く見られるのは三面八臂像ですが、密教の胎蔵界曼荼羅では三面二臂像に描かれています。

准胝観音

(じゅんてい)
「胝」は「提」とも書く

密教の女性尊で、真言系では観音に属し、天台系では准胝仏母といい如来に分類されます。聡明、夫婦愛、他人敬愛、求子安産、延命治病などのご利益があるとされ、とくに求子は、醍醐天皇の御願によって祈ったところ、朱雀、村上両帝が誕生になったこともあって、信仰が寄せられました。

特徴

一面三目十八臂像が一般的で、観音の標識である化仏のある宝冠をかぶります。化仏のない作例もがありますが、観音像としては異例です。斧を持つ作例もあります。

如意輪観音
(にょいりん)

如意とは全てのことを意のままにできる如意宝珠を、輪は煩悩を打ち砕く法輪を意味し、物質的、精神的な願望を成就させるといわれています。

特徴

一般的には一面六臂像で右第1手を頬にあてて思惟(人々をどうやって救おうか考えている)の姿をとり、左第1手は垂下させ、他手には宝珠・念珠・蓮華・輪宝などを持ち、右膝を立て両足裏を合わせる輪王坐という姿勢をとります。また、奈良時代は一面二臂の半跏像が主流です。

不空羂索観音
(ふくうけんさく)

インドでは早くから盛んに作られ、現在でも多くの像が残されていますが、日本では十一面観音や千手観音のような目立った信仰は見られず、作例もあまりありません。
羂索は、戦いや猟で用いる端に環のついた投網のことで、苦悩するすべての人々をもれなく(=不空)救いとります。

特徴

一面三目八臂像が一般的で、2手が合掌し、2手が与願印を結び、他手に羂索・蓮華・錫杖・仏子などを持ちます。

六観音
六道を教化して人々を救済します。天台系では、聖・千手・馬頭・十一面・如意輪・不空羂索を、真言系では不空羂索の代わりに准胝観音を充てます。また聖・千手・馬頭・十一面・如意輪・不空羂索・准胝をまとめて七観音と呼びます。
三十三観音
「法華経」や「観音経」で観音菩薩がその姿を変えて人々を救済するという三十三応現身にちなんで作られました。 白衣を着て髪を高く結い上げ、首飾りをして持物を持つか手を衣に隠しているのが共通点です。尊名や持物等は右欄参照。

弥勒菩薩
(みろく)
弥勒菩薩

サンスクリット語でマイトレーヤといい、慈悲から生まれたものとされ、意訳して「慈氏」といわれます。
釈迦の後継者で、釈迦入滅後56億7千万年後に如来となり衆生を救うとされています。
未来に必ず成仏することから「未来仏」「当来仏」ともいわれ、菩薩でありながら、弥勒如来とか弥勒仏と呼ばれることもあります。

また、中国では布袋が弥勒菩薩の化身と考えられて大いに信仰され、日本にもその信仰が伝えられました。京都の黄檗山万福寺には大きな布袋の像が安置されています。

特徴

奈良時代以前に多く作られた半跏思惟像兜率天(右欄参照)で瞑想にふける様を示す菩薩形、釈迦の次代を担う仏となった様を示す如来形に作られる場合があります。

半跏思惟像としては、京都広隆寺の像が有名です。椅子に腰掛けて右足を左足の膝の上にのせ、左手を右足の足首の上に置いています。右手は曲げて指先を軽く頬に触れて、思惟のポーズをとっています。これは将来、私たちの住む娑婆世界に降りたときに、どのようにして衆生を救済するかを考えている様子を表現したものです。

菩薩形は、一般的には、宝冠をかぶり小さな仏塔を持ちます。膝の上に組んだ手の上に小塔を載せたものと、手にもった蓮華の上に小塔を載せたものとがあり、この小塔は「地・水・火・風・空」の物質の五要素を型どった五輪塔の場合が多く見られます。この形は、鎌倉時代に多く作られました。

如来形の場合は、与願印・施無畏印に組み、装飾品は身につけませんので、釈迦如来像と見分けがつきにくくなっています。

兜率天・・・仏教の世界の中心にある須弥山のはるか上の神々の住む世界で、釈迦もこの世に生まれてくる前にはここに昇って下生の時期を待ったといわれています。弥勒も兜率天に昇り、現在はそこで諸天(神々)に教えを説きながら下生の時期を待っているとされています。

勢至菩薩

大勢至菩薩とも呼ばれ、衆生の無知を救う仏の智慧を表します。
単独で信仰されることはほとんどなく、もっぱら、観音菩薩とともに阿弥陀如来の脇侍となり、阿弥陀三尊を形成します。

特徴

観音が宝冠の正面に阿弥陀化仏を標識としてつけるのに対し、勢至菩薩は水瓶を表します。手は合掌するものが多いが、右手に蓮華を持つ作例もあります。


地蔵菩薩

サンスクリット語でクシティ・ガルバといい、大地の母胎という意味です。釈迦入滅後、弥勒菩薩が成道するまでの無仏時代に、いわゆる六道の衆生を救うために派遣されたものとされています。地蔵菩薩は私たち日本人に最も親しまれている菩薩です。

六地蔵と六道

あの世とこの世の境である六道の入口には地蔵が立ち、衆生を教化すると考えられ、六地蔵が生まれました。

No. 六道 六地蔵 六地蔵の
持物と印相
1 地獄 大定智悲地蔵
(地蔵菩薩)
宝珠
錫杖
2 餓鬼 大徳清淨地蔵
(宝手菩薩)
宝珠
与願印
3 畜生 大光明地蔵
(宝処菩薩)
宝珠
如意宝珠
4 (阿)
修羅
清淨無垢地蔵
(宝印手地蔵)
宝珠
梵篋
5 人間 大清淨地蔵
(持地菩薩)
宝珠
施無畏印
6 大堅固地蔵
(堅固意菩薩)
宝珠
経巻

我々の住む世界(娑婆)は、この六つの世界から成り立っています。上表のNo.1〜3の三つを三悪道、No.4〜6の三つを三善道とも呼びます。人間は人間界にいますが、この世で悪行を繰り返せば、畜生や地獄に生まれ変わり、善いことを積み重ねれば天(神々の国)に生まれ変わります。これを六道輪廻(りんね)と呼びます。
地蔵菩薩は娑婆世界を守ることが使命なので、この六道すべてを守護するといわれており、一つの世界に一体ずつ地蔵を配した六地蔵が作られました。

延命地蔵

片足を踏み下げた半跏像の形式は、安産や延命の利益があるとされています。

特徴

普通の僧侶の姿をしています。
左手に宝珠、右手を施無畏印を結ぶ像(代表作例:広隆寺)と、左手に宝珠、右手に錫杖を持つ像(代表作例:東大寺公慶堂)があります。錫杖は全ての人々を救うために俗界を遍歴することを示し、宝珠は人々の願いをかなえることをあらわしています。
これに対し、曼荼羅の中の地蔵菩薩は、また別の形をしています。胎蔵界曼荼羅では地蔵院の中央に描かれ、左手は拳を作って腰にあてて、上に宝幢というのぼり幡のようなものがついている蓮華を持って、蓮台に座っています。金剛界曼荼羅では、宝生仏の親近である金剛幢菩薩と同体の一尊として、両手に幢幡を持った姿に描かれます。

地蔵菩薩

文殊菩薩



文殊菩薩

サンスクリット語でマンジュシュリーといい、音写して文殊師利または曼殊室利などといい、実在した人物であるとされています。普賢菩薩とともに釈迦如来の脇侍として従います。
文殊菩薩は数ある菩薩の中で最も優れた智慧を持つ菩薩です。それは「三人よれば文殊の知恵」の諺にも表現されます。
こんなエピソードがあります。
『釈迦の弟子たちが、非常に聡明で大乗仏教の奥義に通じた維摩居士に議論を挑んだが、次々とやりこめられた。しかしただ一人、文殊菩薩だけは、対等に論議することができた』
奈良法隆寺五重塔、興福寺東金堂には、その問答を表現した塑像があります。
この文殊菩薩の智慧は純粋に理性的なもので、ものごとを全く主観を交えないで判断することができる、いわゆる悟りの智慧といわれています。

特徴

獅子にまたがり、右手に剣、左手に経巻を持つのが一般的とされていますが、必ずしも一定しません。経巻は智慧の象徴、剣はその智慧が鋭く研ぎ澄まされている様を、獅子はその智慧の勢いが盛んであることを表現しています。
獅子にまたがる像は、平安中期に盛んに作られ、それ以降の模範となりました。
また密教では、右手に梵篋(ぼんきょう=多羅樹という木の葉に経文を刻んだもの)、左手に金剛杵などを持ちます。
髪は、一つ、または五つ、六つ、八つのまげを結っています。密教では陀羅尼(だらに=一種の呪文)を唱えることによって、ある特定の御利益を得ようとします。この陀羅尼は一文字から数文字の短い文句ですが、この文字数と文殊菩薩のまげの数とが一致します。つまり一文字の陀羅尼を唱えるときは、まげが一つの文殊菩薩を本尊とし(これを一文字文殊または一髷(いっけい)文殊とよぶ)、五文字、六文字、八文字の陀羅尼を唱えるときは、それぞれまげが五つ(五文字文殊、五髷文殊)、六つ(六文字文殊、六髷文殊)、八つ(八文字文殊、八髷文殊)の文殊菩薩を本尊とします。それぞれ、増益、敬愛、調伏、息災などの御利益があります。

稚児(ちご)文殊

稚児のような純粋無垢で執着のない智慧であることから、子供の姿に作られる例も多く、これを特に童形(どうぎょう)文殊または稚児文殊と呼んでいます。

僧形文殊

僧侶の日常生活の手本とされたことから、僧の形に似せる例もあり、僧形文殊といわれます。

五台山文殊

眷属として善財(ぜんざい)童子や優(于)でん王(うでんおう・うてんおう、「でん」「てん」は土へんに眞)、仏陀波利三蔵(ぶつだはりさんぞう)、最勝老人(さいしょうろうじん)を従える、五尊形式の作例もあり、五台山文殊といわれます。五台山とは、中国山西省にある地名で、文殊菩薩の聖地とされる「清涼山」と比定して信仰された場所です。五台山信仰は天台宗を中心に盛んになりました。高知竹林寺、奈良安倍文殊院などの作例が遺っています。

渡海(とかい)文殊

五台山信仰が発展し、雲に乗って海を渡り五台山に向かうとされています。

日本三大文殊

安倍文殊院(奈良桜井市)、切戸文殊(京都天橋立(知恩寺))、黒谷文殊堂(京都東山金戒光明寺)

眷属

五台山文殊の場合、善財(ぜんざい)童子、優でん王(うでんおう、「でん」は土へんに眞)、仏陀波利三蔵(ぶつだはりさんぞう)、最勝老人(さいしょうろうじん)。
また、八大童子として、光網(こうもう)童子、宝冠童子、無垢光(むくこう)童子、髷設尼(けしに)童子、烏波髷設尼(うばけしに)童子、質多羅(しったら)童子、地慧幢(ちえとう)童子、請召(しょうじょう)童子。


普賢菩薩
(ふげん)

サンスクリット語でサマンタバドラといい、サマンタは行き渡ること(普)、バドラは「賢」、あるいは「吉祥」(めでたいこと)を意味し、これを漢訳して普賢、または遍吉といわれます。
行(修行)の代表で、文殊菩薩とともに釈迦如来の脇侍として、慈悲をつかさどり、堅固な菩提心を持ち、また女人往生をも説いて広く信仰されました。

仏教では智慧と実戦的な修行がバランスよく行われることを理想としています。文殊菩薩の「智慧」と普賢菩薩の「行」の両方がそなわることによって、仏教の教えは完全なものとなり、釈迦如来の無限の慈悲も真の輝きを表すことができると考えられています。このようなことから、文殊・普賢の両菩薩を脇侍とした釈迦三尊像が作られるようになりました。

また、仏教では女性は男性とは比べものにならないほど煩悩が深く、成仏できないとされていました。「法華経」はこのタブーを破ってはじめて女人成仏を説いたことから、とくに女性の信仰が篤かったといわれます。眷属として十羅刹女をしたがえ、雲に乗って飛来する仏画が好んで描かれました。

特徴

合掌し白像の背上の蓮華座に結跏趺坐するものが多く、まれに蓮華や如意・経典などを持つ場合も見られます。密教系では、左手に剣を立てた蓮茎をとるか、あるいは左手に五鈷鈴、右手に金剛杵を持つ例が見られます。また、古い時代には象に乗らない像もあります。
また、密教では普賢菩薩の悟りを求める心が金剛不壊(固くて絶対に崩れない)であることから、金剛界曼荼羅の中心的な菩薩である金剛薩た(た=「土へん」に垂)と同一視されるようになりました。この場合、左手は握って拳を作って腰にあて、右手には剣を持っています。
胎蔵界曼荼羅では、弥勒・観音・文殊の諸菩薩とともに四菩薩の一つに描かれ、左手には蓮華をもっています。
剣をもつのは、この菩薩の悟りを求める心が固いことを表しています。

眷属

天女形の十羅刹女(じゅうらせつにょ=尼藍婆・毘藍婆・曲歯・華歯・黒歯・多髪・無厭足・持瓔珞・皐諦・奪一切衆生精気)が従います。
それぞれ、独杵や念珠、花などを独杵や念珠、花などを持ちます。
十羅刹女は、「法華経」の「陀羅尼品」にも説かれ、人をだまして食うという悪鬼でしたが、仏教に帰依してその守護神となりました。

普賢延命菩薩

普賢菩薩には延命(寿命を延ばすこと)のご利益があるといわれ、この像を本尊として延命を祈願するようになりました。


虚空蔵菩薩
(こくぞう)

サンスクリット語でアーカーシャ・ガルバといい、虚空というのは空間的な広がりのことで、宇宙の果てまで果てしなく広がる大空のことをさします。虚空蔵菩薩はこの虚空のように広大無辺で、破壊されることのない福徳と智慧を兼ね備えています。主として密教で発達した菩薩で、曼荼羅に描かれるとともに、大日如来を中心とする五大虚空蔵菩薩などが多く作られています。
また、偉大な記憶力を授けてくれる菩薩として信仰を集め、虚空蔵菩薩を本尊とする求聞持法という修法が盛んに行われました。

特徴

求聞持法の像では、満月を描いたなかに蓮華上に半跏し、左手に如意宝珠のある蓮華を持ち、右手には5指を垂れた与願印を結び、頭に五仏冠と呼ばれる5体の化仏のついた宝冠をかぶります。
胎蔵界曼荼羅では、五仏冠をかぶり、右手は曲げて宝剣をもち、左手は如意宝珠を載せた蓮華を持ちます。金剛界曼荼羅では、宝珠のついた蓮華を右手にもち、左手は拳をつくって腰に当てています。

五大虚空蔵菩薩

五大金剛虚空蔵とも呼ばれ、大日如来を中心とする金剛界五仏が変化したものです。
法界虚空蔵(中方)、金剛虚空蔵(東方)、宝光虚空蔵(南方)、蓮華虚空蔵(西方)、業用虚空蔵(北方)の5尊をいい、増益や除災を願って行ずる修法の本尊で、とくに辛酉年の除災修法の本尊とされています。
宝冠をかぶり、左手に鈎を持ちますが、体の色や台座、持物、印などは一定していません。


日光菩薩

月光菩薩

日光菩薩は、日の光で人間の煩悩を照らして無知を打ち破る仏の英知を表し、月光菩薩は、月の光のようなやさしい慈しみの心、仏の慈悲を表します。
単独で祀られることはなく、主に薬師如来の脇侍として造られます。東大寺三月堂の像は、不空羂索観音の脇侍として祀られています。

特徴

日光菩薩は右手を上げて左手を下げ、月光菩薩はその逆であるように、対称的に造られる例が多く、下げた手(または両手)で輪を作る例も多くあります。一面二手で、蓮華を持ったり、合掌したりと、その姿は様々です。持物が色分けされ、金か赤なら日光菩薩、銀か白なら月光菩薩。また、手にした円盤に彫られた動物が、烏なら日光菩薩、蛙や兎なら月光菩薩です。
太陽のもとでも、月の光のもとでも、あまねく照らして、病苦に苦しむ人々を見逃さないようにしています。

東大寺三月堂月光菩薩
東大寺三月堂 月光菩薩像
©
フロリアンチッチ

薬王菩薩

薬上菩薩

釈迦如来の脇侍として祀られ、薬をもって人々を救うとされています。薬王が兄で、薬上が弟の兄弟であるとされています。法隆寺金堂の釈迦如来は、この菩薩を脇侍として従えています。

特徴

薬王菩薩が薬草・薬壺、薬上菩薩が薬壺を持ちますが、一定していません。二十五菩薩中の1尊にも加えられています。


金剛薩た菩薩
(た=「土へん」に垂)

金剛はサンスクリットのヴァジュラの訳で、仏の知が堅固なことを象徴し、その威力であらゆる煩悩を破壊するとされています。密教において、一切の衆生が菩提心を起すきっかけをつくる菩薩で、大日如来の教えを衆生に伝授する役割を担い、人々の発心をうながす、重要な仲介者でもあります。
密教では、大日如来の教えを受けた密教第2祖として崇敬されているほか、大日如来の母たる存在としても信仰され、普賢菩薩と同体ともされています。

特徴

右手に五鈷杵、左手に五鈷鈴を持つ作例が多く、また左手で拳をつくり、右手は胸の前にあげて三鈷杵を持つ作例もあります。


五大力菩薩
(ごだいりき)

五大力吼(ごだいりきく)、五方(ごほう)菩薩ともいい、鎮護国家を祈って修せられた仁王会の本尊で、5000の大鬼神の王とされています。 「五大力さん」として名高い醍醐寺の仁王会は、毎年2月23日に修され、参拝者には五大力菩薩のお札が授与され、盗難除けや災難身代わりの護符として祀られます。



▽五大力菩薩の名称と、主な持物は下記の通り
▽「仁王経」の不空訳では、密教の影響で五大明王と結びつき、名称や姿に変化が生じました
金剛吼 千宝相の輪
竜王吼 金輪灯
無畏十力吼 金剛杵
雷電吼 千宝の羅網
無量力吼 5000の剣輪

金剛手 金剛杵
金剛宝 魔尼
金剛利 金剛剣
金剛夜叉 金剛鈴
金剛波羅蜜多 金剛輪

特徴

菩薩でありながら分怒相を示すものが多く、秋篠寺には4尊が片足をあげて蹴り上げる像があります。


■二十五菩薩 の尊命と持物
観世音
(かんぜおん)
蓮台
大勢至
(だいせいし)
合掌
薬王
(やくおう)
幢幡
(どうばん)
薬上
(やくじょう)
玉幡
(ぎょくばん)
普賢
(ふげん)
幡蓋
法自在王
(ほうじざいおう)
華鬟
獅子吼
(ししく)
陀羅尼
(だらに)
舞いながら
袖を持つ
虚空蔵
(こくぞう)
腰鼓
徳蔵
(とくぞう)

(しょう)
宝蔵
(ほうぞう)
金剛蔵
(こんごうぞう)
金蔵
(こんぞう)

(そう)
光明王
(こうみょうおう)
琵琶
山海慧
(さんかいえ)
箜篌
(くご)
華厳王
(けごんおう)

(けい)
衆宝王
(しゅうほうおう)

(にょう)
月光王
(がっこうおう)
振鼓
日照王
(にっしょうおう)
羯鼓
(かつこ)
三昧王
(さんまいおう)
天華
(てんげ)
定自在王
(じょうじざいおう)
太鼓
大自在王
(だいじざいおう)
華幢
(けどう)
白象王
(はくぞうおう)
宝幢
(ほうどう)
大威徳王
(だいいとくおう)
曼珠
(まんじゅ)
無辺身
(むへんしん)
焼香
般若菩薩

サンスクリット語でプラジュニャーパーラミターといい、 あらゆる物事を一瞬のうちに悟る直感的な智慧をもち、仏教ではこの智慧を得ることによって悟りをひらくことができることから、これを最高のものとし、この智慧を獲得することを至上目的とします。
彫像や塑像は作られないのであまりポピュラーではありませんが、密教の胎蔵界曼荼羅では、その中心に描かれる重要な菩薩です。胎蔵界曼荼羅の持明院の中央尊として三目六臂の般若菩薩がおかれ、また虚空蔵院にも二臂の般若仏母として表されます。

特徴

宝冠をかぶり、様々な装飾品を身につけています。甲冑や羯磨衣を着け、手に経典を象徴する梵篋(経箱)を持つものや、智慧を表す剣をとるものがあります。また、六臂のものは、六波羅蜜(菩薩が行う6つの実践行)を象徴したもので、 左手の一本には経文をもって、胸の前で支え、他の五本の手はそれぞれ異なった印を結んでいます。

眷属

十六善神を従えます(般若十六善神)。


大随求菩薩

(だいずいぐ)

大自在と同義の菩薩で、随求菩薩ともいいます。この菩薩の真言を唱える者は、様々な苦難を逃れることができるとされています。息災・滅罪をはじめ広い効用があるが、なかでも求子の効能が喜ばれて、平安時代以降、人々の篤い信仰を得てきました。口で真言をもっぱら唱えることが先行して、本尊像としての造像に結びつかなかったため、現存する作例は京都清水寺の坐像、大阪観心寺の画像のほかはあまりありません。

特徴

慈悲円満相で八臂、右手に五鈷杵・剣・斧・三股戟、左手に輪宝をのせた蓮華・索・宝幢・梵篋を持ちます。宝冠中に化仏があり、蓮華に座ります。


二十五菩薩

阿弥陀如来の来迎に従って、これから往生しようとする者を浄土へ迎えます。仏像としての作例はほとんどなく、阿弥陀来迎図などの仏画に描かれることが多い。菩薩の名称と持物、特徴は必ずしも一定しません(右欄参照)。

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