ライン川のリューデスハイムからザンクトゴア間は、一番見所が多いらしい。
両岸に古城や城砦が次々と現れ、斜面の一部にはブドウ畑が広がる。
曇り空で時々パラパラと雨粒が落ち、風が冷たくてずっとは外にいられない。それでも景色が見たくて、震えながらほとんどデッキで移りゆく景色を楽しんだ。
ライン川には土砂を運ぶ船など、観光船のみならず仕事のための船も多く、この川が生活に密着していることがうかがわれる。
天候のせいで景色が少し暗い印象なのが残念。晴れていたら・・・との想いが頭をよぎるがこればかりは仕方がない。
緯度は樺太と同じぐらいだが、思ったより木々が芽吹き、対岸のところどころには白い花が咲いているが何だろう。
添乗員さんや船内の日本人スタッフに聞いてみたが、はっきりとは分からなかった。
古城の運命は時代とともに変り、今はホテルやレストランに変身している城もあるようだ。
関税を徴収する為、中州に建造されたブファルツ城が見えてきた。この城は現在博物館になっている。
美しい乙女の歌声に魅せられ、多くの船が座礁したという伝説があるローレライを過ぎ、一時間半ほどのクルーズはあっという間。そろそろザンクトゴアに到着・・・と思っていたら、突然「お客様にご案内します。前方よりロシアのスペースシャトルが・・・」と、アナウンスが流れた。
スペースシャトル?どういうことなのかすぐにはピンとこず、それでも慌ててデッキに出た。シャトルはまだかなり遠く肉眼では見えない。望遠レンズでどうにか確認でき、ようやく宇宙から戻ってきたスペースシャトルだと納得。だから、川岸に人が多かったんだ!
放送が入ってほどなくクルーズが終わり、ザンクトゴアで下船。
それにしても運がいい。すぐに次の目的地への移動だったら、シャトルを近くで見ることはできなかっただろうから。
昼食の途中で、オーナーの「もうそろそろよ!」の声に全員がレストランを飛び出した。
目の前をシャトルがゆったりと上流に向けて進んでいる。
思っていたよりずっと大きい。
川岸に集まっている人は、この瞬間を待ち構えたに違いない。と考えると、なんの予備知識もなく、偶然に出会えた幸運が信じられないほどだ。
その迫力に興奮しながら必死に写真を撮り、その後は安心して大きなロールキャベツをほおばった。
ちなみに、このロシアのスペースシャトル「ブラン」は、3月6日にバーレーンを出航。ペルシャ湾などを経てスエズ運河を抜け、オランダのロッテルダムからライン川に入ったとのこと。
私たちが遭遇した翌日の4月11日、ドイツ南西部のシュバイヤーに接岸し、12日に無事陸揚げされた。
後日フランクフルト近くの博物館で一般公開されるそうだ。
「ロマンティック街道」と聞いて、心ときめくのはうら若き乙女だけではない。
何時か訪れたいと思っていたドイツ・・・ほんのちょっぴり6日間の旅だ。
家を出てから24時間近くが経ち、ようやくフランクフルト近郊のホテルに到着。
あまりたくさん睡眠時間がとれなかったけれど、翌朝はモーニングコール前に目が覚めた。
扉を開けると、部屋の中に冷たい風が入り込み心地良い。外はまだ闇。目の前にはまるで森を思わせるような木立が黒々としている。
夜が明け始めると同時に、オルゴールのような音色が聞こえ始めたが何だろう?
再びバルコニーに出て、それが鳥たちのさえずりと分かった時の驚き!何種類かの鳥たちが、競うかのように、それも気持ち良さそうに鳴いている。
鳴いているというよりまるで唄っているようだ。娘と二人、響きわたるその声にしばし聞きほれた。
森の国、ドイツで初めての贈り物を受け取ったような気分だ。
早春のロマンティックドイツ 2008 その1
〜ライン川クルーズ&スペースシャトルとの遭遇〜
〜ハイデルベルグ散策〜
船で下ったライン川沿いをしばらくバスで戻り、ハイデルベルグへ向かった。途中、さきほど出合ったスペースシャトルを追い越し、再び感動がよみがえる。
いかにもドイツらしい、筋金入り(?)のロールキャベツをお腹いっぱい食べたので、いつの間にかうとうとしてしまったらしい。
ふと気がつき外を見たら、まだ川沿いなのでライン川かと思ったら、いつの間にかネッカー川沿いを走っていた。
しばらくして、ゲーテやショパンも憧れたという美しい街、ハイデルベルグに到着した。
13世紀の半ばに建設が始められたハイデルベルグ城は、17世紀始めまでに増改築が繰り返されたため、各時代の建築様式が混在している。
長い歴史には何度かの戦争があり、一部その傷跡が残され、生々しいはずなのにそういう感じはしない。まだ芽吹き始めの木々が余りにも生き生きとして生命の息吹が感じられたせいだろうか。
ハイデルベルグ城から一望できる、ネッカー川と旧市街は素晴らしい景観だ。
住居などがひしめき合っているのは日本も同じだが、統一感があり美しい。高い建物は教会など限られているから、街を歩いてものびやかな雰囲気だ。
ハイデルベルグ大学の近くには学生牢があった。
どんなところ?と思いきや、壁には似顔絵や名前他ユーモラスな落書きがびっしり。とても罪をつぐなう雰囲気ではない。
かつての大学は治外法権で、学生が酒場で暴れるなどの軽犯罪を犯しても警察は介入できず、その対策として造られたのが学生牢だそう。ここに入ることは学生たちにとって、男の勲章ともいえる体験だったようだ。
ツアーお決まりの免税店での買い物時間は、娘と二人で脱走を試みた。街角でふと目に留まったのが火を使ったパフォーマンス。食い入るように見つめる数人の子どもたちの表情が何んともいえず愛らしい。私はしばらくその子達に見とれてしまった。
梨だろうか。
白い花をつけた木が気になり、夕食前にホテル周りを散歩した。
緑の牧草と白い花の向こうにはひとかたまりの集落が見える。
こんな何気ない景色が私は好きだ。
旅先でのこういう贅沢な時間が嬉しい。